作曲をはじめてみよう! 第2回 ~1コーラス作ってみよう~
好きな曲を演奏できるようになったら、次は自分だけのオリジナル曲を作ってみませんか?
この特集では、作曲未経験の方でもすぐに実践できる作曲テクニックをご紹介します。
第2回は「1コーラス作ってみよう」。前回学んだ短いメロディの作り方を応用して、一般的なJ-POP楽曲でよくある1コーラスの展開を作ってみましょう。
今回もヤマハミュージックエンタテインメントホールディングスから発売中の書籍『ゼロからの作曲入門~プロ直伝のメロディの作り方~』より抜粋してお届けしますので、もっと作曲のことを知りたくなった方はぜひこちらも手に取ってみてください。
現在のJ-POPでは、以下のような構成が多くあります。
[イントロ]―[A]―[B]―[C(サビ)]
1コーラスの中で、「歌詞の中の感情」がどのように動き、メロディにどのような影響を受けるか考えてみましょう。
A メロは状況説明!
[1]感情の方向 → 比較的淡々と
Aメロは[状況説明、日常]を担います。暑いのか、寒いのか、楽しいのか、悲しいのか、主人公や中心となる人物が置かれている立場を説明するパートです。感情表現はそれほど激しくないパートですが、曲によっては例外もあります。
[2]音域と言葉のリズム → 日常会話のリズム
読み聞かせに近いため、日常会話するような速度になる音符をチョイスし、会話のリズムに近づけると、歌詞がはっきり聴き取れて耳に残りやすくなります。
[3]音程の意識 → 会話のイントネーションに近く
Aメロは先述の通り日常会話に近い音程で歌う「読み聞かせ」に近いパートです。音符同士の音程が大きいと不自然な話し方になりますね。
たとえば「渋谷に行った」という言葉を音符にしてみましょう。
歌詞に対してメロディをつけるときは「会話のイントネーションに近い音の流れ」にしてあげるのが基本です。たとえば「遠くに見えるかげろうの揺らぎ」であれば、以下のようなイメージになります。
Aメロのメロディを考えてみよう
これらを踏まえてAメロを作ってみましょう。まずは短いメロディを作って、それを発展させながら一般的なAメロの長さである8小節を目処に組み立てます(もちろんもっと短くても長くても大丈夫です)。
例としてAメロを作ってみました。音符はそれほど離れておらず、話すときの音の高さに近いです(女性ボーカルを意識しています)。同じ音符を多用することで言葉が乗せやすくなります。
Bメロは、曲の中での変化を入れやすい箇所です。Aメロで状況説明をしたあとで、主人公のバックボーンや思いを詰め込みます。
B メロは変化・回想・秘めた決意
Bメロの作り方は、主に3パートに分けて考えてみましょう。ここで紹介する例がすべてではないですが、このような考え方で行うと作りやすいはずです。
[1]B メロ前半 → 回想や更なる状況説明
もしAメロで8分音符や16分音符など言葉数が多かった場合は、Bメロではロングトーンと細かい音符をうまく使ったメロディをつけましょう。人が回想、つまり何かを思い出すときに「えっと、あそうそう」となりますね。
[2]B メロ中盤 → 秘めた決意
自分の中での答えが見つかりました。そうなると早く口に出して答えを言いたいですね。なので、細かい音符を最初につけて、そのあとにロングトーンにします。つまりBメロ前半と対称にするわけです。
[3]サビの寸前 → 心を落ち着かせる
サビの寸前では、心を落ち着かせて、サビに向けての決意をシンプルに言います。ここでは4分音符や8分音符などゆっくりした音符で、さらにシンコペーションでリズムを変化させないようにして、「言ーいーまーす」というようにゆっくりした音符構成にしてみましょう。するとBメロが締まります。
Bメロのメロディを考えてみよう
B メロも作ってみましょう。感情の動きを音で表現してみるのです。A2メロと同様に短いメロディから発展させていけばきっと作れます!
Bメロもサンプルを作ってみました。前半はロングトーンで始まり、8分音符で階段状に上がったあと、穏やかな流れになるリズムモチーフを2回、中盤は16分音符で階段状に上がり、音を伸ばした構成にして、似たリズムモチーフを3回繰り返しています。後半は8分音符とロングトーンで構成して歌詞を聞き取りやすい音符を使いました。
最後の小節では、自分の中の結論を4つの音に託し4分音符で表現しています。規則性のある4分音符で構成したメロディは、日常生活でもよく使用します。たとえば、周りが騒いでいる状況で「しーずーかーに!」って言われると耳がそっちに行きませんか? このようなアプローチは聴き手の注意を引く効果があるのです。
いよいよサビです。サビはここまで心に秘めた言いたかったことを発表する場所です。映画で言えばクライマックス。一番心震える場所、感動する場所です。逆に言えば、心が動かない、感情が動かないサビはダメです。聴いていてグッとするメロディ作りを目指しましょう。
C メロ(サビ)は魂の叫び
さて、サビでよく使われるのが音の跳躍です。たとえば人が叫ぶときは、低い音から高い音へ「うぅぅ~あっ!」と上がりますよね。サビはいわば魂の叫びなのです。
サビで意識したい7項目!
サビはわかりやすさも大事です。サビだけ良ければ良い曲というわけではありませんが、A メロ、Bメロで少しずつ盛り上がってきて、サビがダメダメだとがっくりしますよね。
そこで、わかりやすく盛り上がるためのテクニックを7つ紹介します。ただし全部を盛り込もうとしてもうまくいかないと思います。自分の作りたい曲に合ったテクニックを使いましょう。
- 音の跳躍を使う
- 一番言いたい言葉がハッキリ聴き取れる音符を使う
- 16分音符のシンコペーションのように速い音符は緊張感を表現できる
- 短い音符同士の高い音への飛躍は歌うのが難しいので要注意
- 高い音のロングトーンは感情の高ぶりを表わすのに最適
- 同じリズムの短いメロディを数回繰り返すと覚えやすい
- メロディは予定調和8割、非予定調和2割の音の流れがバランスが良い
上記ポイントを踏まえて制作したメロディがこちらです(テンポ90くらいを想定しています)。
冒頭でミからドへ6度の跳躍をし、勢いをつけてサビが始まります。2~3小節目では同じリズムのメロディを繰り返しています。ピッチだけ変化させて少しずつ音域を下げてくることで、冒頭の跳躍で行なった熱さを冷ましている感覚のメロディです。
また、3 小節目で「シ♭」、そして7~8小節目には「ファ#」が出てきます。これは非予定調和な雰囲気を出し、心が動かされる要因を作るのが狙いです。どことなく切なさが加わっているのではないでしょうか?
どうして非予定調和になるのか、それはこれらの音が「スケール」からわざと外しているからなのですが、ここでは覚えなくても大丈夫です。
今回はここまで。
次回は曲を彩る「コード」の基礎を紹介します。
次回は曲を彩る「コード」の基礎を紹介します。
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