皆さんはドビュッシー風と聞いてどのような特徴を思い浮かべるでしょうか。印象派の絵画を思わせる表現とか、捉えどころがなくあいまいな曲調とか、意表をついた和音の進行とか…。普段ドビュッシーの音楽に親しんでいる人もそうでない人も、このようなドビュッシー風味を楽しみつつ演奏いただけたら幸いです。ここで一つ、音楽をドビュッシー化するために用いた方法として、全音音階による作曲法を紹介しておきましょう。全音音階は1オクターブの12の音を1つ飛ばしに選んだ音階（例：ド-レ-ミ-ファ#-ソ#-ラ#）で、この音階内の音を用いることにより、調性感があいまいな、音がゆらいで感じられる不思議な響きを創り出すことができます。皆さんは冒頭の３小節で、すでにその独特な音の世界にお気づきかもしれません。ここでは二つのペダル（弱音ペダルも！）を駆使して変化する音のニュアンスを表現することが必要になり、以後、演奏全体でも不可欠なことになるでしょう。 （大宝 博）