1973年に発売された荒井由実のファースト・アルバムに収録された曲です。フォーク・ソングやロックといった、若者に人気のあったジャンルとは異なる、洒落たハーモニーやアンニュイなメロディと独特な世界観を持った歌詞の音楽で、“ニュー・ミュージック”という新しいジャンルが生まれた時代を代表するような歌と言えそうですね。ベルベットは、柔らかくて肌触りの良い高級感のある織物。イースターは、基本的に春分の日の後の満月の次の日曜日、キリストの復活を祝う復活祭のことです。歌詞を辿っていくと、季節はもちろんのこと、天気や時刻、微妙な恋心を抱く年頃の女の子の心情や背負った過去までも想像してしまう言葉のマジックが詰まった歌。また、西洋文化や風習にも深い造詣を持ったユーミンの音楽の魅力に引き込まれていくような逸曲です。独特な浮遊感を持ったピアノのイントロなど、原曲に込められた大切な音楽的要素は壊さないようにしながらも、リズムの刻みなどは控えめに、特に左手の伴奏部分は、楽譜上の音符の数を、非常に抑えた形にまとめています。ただ、決して“易しい”レベルのように削り込んだわけではなく、考え方としては、厳選した音のひと粒ずつにさらに磨きをかけていくという感覚で、演奏していただけたなら嬉しく思います。［A］は、左右の手を故意に交叉させて弾くようにしてありますが、あくまでメロディが際立って聴こえるようにするための弾き方や、見“映え”することも、ちょっと意識してみました。全体の湿度は高めでも、ベタつくことのない、前へ確実に進んでいく雰囲気を併せ持ったようなサウンドに仕上げて欲しいです。