シルフィードとはヨーロッパにおける神話や伝説に登場する空気や風の妖精である。時代によっては美の象徴として描かれることもあったようで、バレエやファンタジー作品において散見される。拙作では「風」をキーワードに、作曲のイメージを膨らませた。風の作り出す流れを音楽的に描写するために、順次進行(音階)のパッセージや装飾的な動きを多用している。作曲に際して、感覚的な材料となったのは、春頃に吹くような風や暖気である。春の風はまだ冷たさを残す一方、暖かく穏やかに吹くこともある。また美しい桜を咲かせる暖気は、オーボエの牧歌的な哀愁帯びた響きとともにシルフィードの存在を彷彿とさせる。