西暦1812年はロシアに侵攻したナポレオン率いるフランス軍が敗走した年です。それから68年後の1880年、チャイコフスキーはこの故事を題材にして、ある祝賀のためにこの曲を作曲しました。通常のオーケストラの他に別仕立ての金管群が並び、大砲の音まで出てくる大掛かりな編成です。戦いの場面、散り散りに逃げ戻るフランス軍と凱旋するロシア軍の有様を音で見事に描写しています。フランス国歌ラ・マルセイユをフランス軍に、ロシア正教の聖歌と帝政ロシア国歌をロシア軍に見立てて構成されています。冒頭部分は静寂な中にもしっかりしたタッチで弾くように心掛けてください。後半はダイナミックに堂々と、横の流れの中でロシア国歌を奏でてください。ダンパーペダルの響きでオーケストラのボリューム感を出せると良いでしょう。